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どーも!某 (@7254bou)です!
タイムラインにこんなツイートが流れていました。
博士号取得者各位#東京MX pic.twitter.com/9Cqmc81eBy
— ケイさんは断酒して減量を試みる (@caol_kay_ila) August 19, 2019
何やら「アメリカの博士号」と「日本の博士号」の難易度は全然違うという話。
これは東京MXで放送された「バラいろダンディ」という番組内で「苫米地英人」さんが話す際に使われたフリップだそうですが、批判も含め結構な反響があったようです。
少なくともこのテロップ内の「日本の博士号」については私でも言えることはあると思うので、解説します。
そもそも博士号って?
博士号が何か知らない人もいると思うので、まずは簡単に解説します。
大学では卒業すると「学士」という学位を貰えると思いますが、それより先の大学院まで行くと、それがさらに「修士」になり、最終的に「博士」となります。博士号の取り方については別記事で紹介しているので、そちらを見てください。
簡単に言えば、研究者として認められる資格のようなもので、大学教員(教授など)や一部の企業で研究職に就くのに必要とされます。
日本の博士号って簡単に取れるの?
個人的な意見ですが、簡単とは言えないと思います。
アメリカの大学院を出た訳ではないので、比較して簡単かどうかは正確に伝えることはできません。しかし少なくとも日本の博士過程については知っているので、先ほどのフリップの疑問を一つずつ解決していきましょう。
博士論文のテーマ: 欧米で前例があるのが望ましい
当たり前ですが、日本だろうがどこの国だろうが博士論文になるものというのは新規性が求められます。
というよりも博士論文以前に大学の卒業論文ですら前例のあることなどやりません。
また、多くの博士過程においては、自身の論文を審査ありの学術誌に載せている必要があります。学術誌に載せるということは、自分の研究を論文として世界に発信することで、もちろん新規性が求められます。
誰かがやったことや前例があることはありえないはずです。
基本的に新規性のないものは論文にはなりません
取得の難易度: 3年修了で事実上自動的に博士号が取得できる
この番組によると3年修了で自動的に博士号が取得できるそうです。
ちょっと古いですが、平成24年度の博士過程のうち博士号を取得するのに標準修業年数(3年)からどれぐらい超えたかを調べた調査を見てみましょう。
この表[1]をみるとわかると思いますが、だいたい半分ぐらいの人が3年よりも多くかかって博士号を取得しているのがわかります。
ということは3年で自動的に博士号が取れるというのは嘘だと言うことがわかりますね。
ちなみにこれは学位を取得できた人のデータですので、博士号を諦めて満期退学する人も考えると、3年で博士号を取れている人の割合はこれよりもさらに少なくなります。
また、先ほども言った通り多くの大学では論文を学術誌に掲載しておく必要がありますし、口頭試問もあります。そしてこれらの条件を満たせなければ、当たり前ですが博士号は取得できません。
3年で自動的に博士号が取れるという意見はありえません
博士号の価値: 学校のネームバリューは同じ
これに関しては、人によるとしか言えません。
どこでとっても一緒と言えば一緒です。でもすごい成果を上げている研究室の多い大学や、いわゆる偏差値の高い大学だと「凄そう」には見えます。
少なくとも僕の分野ではどの大学で取ったから凄いというよりかは、どちらかと言えば研究室単位でみられます。有名な教授が主宰している研究室でとったから凄いみたいな感じですね。
個人的な意見では、そんなの見てないで本人と研究についてディスカッションすればある程度わかるだろとは思いますけどね。むしろ成果のみではその人の凄さはわからないと思います。
有名な研究室でも教授などのスタッフ陣と二人三脚で凄い成果を出すところもあれば、博士過程の学生がテーマ発案からなんの助けもなく一人でやってなんとか形にするようなところもありますし、一概には言えないというのが私の意見です。
これに関しては考え方によります
海外の人にとって日本で博士号をとりやすいか?
私は国立大学にいましたが、海外の人への奨学金等の支援の手厚さはすごいので海外から学生が来る理由はわかります。
また、外国語を母国語とする方にとっては英語で口頭試問等を行うわけですが、英語が母国語であるアメリカと比較すれば語学レベルは大きく必要とされません。それなりに話せれば、教授陣側も英語は母国語ではないので、アメリカと比較すれば大目に見てくれる傾向はあると思います。
もちろん研究者なので日本人でも英語は使えますよ。ただあくまで母国語として英語を使っている国と比較すれば多めに見てくれるだろうというだけです。
そういう意味では英語を母国語としている国と比べれば少しは取りやすいかもしれません。
アメリカで学位をとったことはないので詳しいことはわかりませんが、アメリカの博士取得年数は日本よりも高い傾向にありますし、求められるものも違いますので日本より厳しいというのは事実だと思います。
ただし、上のデータから分かる通り日本で博士号を取得するのも大変ですよ。
アメリカの方がより厳しい。でも日本での取得が簡単なわけではない。
参考
文部科学省ホームページ「未来を牽引する大学院教育改革~社会と協働した「知のプロフェッショナル」の育成~」, < https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2012/07/23/1324483_01.pdf > 2019年10月8日アクセス ↩︎